学校保健と感染症 -とても勉強になりました ~広報 Sさんの「学校保健委員会」レポート
7月13日、体育館にて学校保健委員会が行われました。養護教諭の先生と校医の先生方が講演をしてくださり、保護者・教職員の合計約80名が参加しました。
「学校保健委員会」とは児童の健康問題について、学校、保護者、関係機関等が協議するための組織です。毎年子供たちや保護者のためになるテーマを取り上げていただき、この時期に講演会が開催されています。
4年ぶりの対面開催となった令和5年度 学校保健委員会は、本校の内科校医 大塚 宜一 先生をお迎えして「学校保健と感染症」について講演していただきました。
第一部
【定期健康診断の結果の考察と健康講和】
はじめに養護教諭から、学校医・学校薬剤師の先生方の紹介があり、その後、定期健康診断結果とその考察について校医の先生方からお話がありました。
内科校医 大塚 宜一 先生
内科の大塚宜一先生からは、子供たちの健診の様子についてのお話がありました。子供たちは、挨拶もしっかりできて健やかに育っているとのことです。
データ上では、湯島小学校の児童は全国平均と比較してアレルギー疾患を持つ割合が高くなっていますが、これは軽度の症状から治療をしている保護者の方が多いからと考えられるそうです。アレルギーを心配される保護者の方は多いですが、お家でしっかりケア出来ているので心配無いとのことです。
アレルギーに関連して、アナフィラキシーが起きた場合などは焦らず迅速な対処が必要となりますが、ただ蕁麻疹だけが出たとしてもそこまで心配する必要はないとのことです。
この時期、熱中症や脱水症状に気を付ける必要がありますが、大塚先生は一つの判断基準として、3時間に一回尿が出ているかどうかに注意をされているということです。
眼科校医 山田 美也子 先生
保護者から近視についての相談を受けることも多いですが、湯島小学校の児童は東京都平均と比較して裸眼視力1.0以上の割合が高いそうです。
オルソケラトロジーという治療についての相談もしばしばあるそうですが、実際に裸眼視力が改善するケースも見られるものの、一時的なものである可能性もあるため、山田先生としては推奨はしていないということでした。
「近視の眼鏡をかけることで近視が進むのでは?」と心配する保護者の方もいるそうですが、それはあり得ないので安心して必要な治療を行ってほしいということでした。ただし、過矯正をすることによって良くない影響が起こることはあり得るということです。
お家では、
- 電子機器の使用で目に負担がかかる心配があるため、30分に一回は休めましょう
- 夜寝る前にメラトニンというホルモンが出るので、就寝の30分前にはパソコンなどの電子機器の使用は控えるましょう
というお話がありました。
湯島小学校の児童の眼科のアレルギー疾患を持つ割合が、東京都平均よりもデータ上高くなっているのは、保護者の健康への意識が高く早期から治療をしているからだと考えられるということでした。
耳鼻科校医 木村 美和子 先生
今年は気候の変動が大きかったので、耳垢や鼻水といった症状が例年より多くなっていたとのことでした。木村先生は音声言語が専門なので、一年生と転入生を対象に音声言語の検査を行っているとの説明がありました。発音は早期から治療的介入をすると改善するケースも多いので、検査が大切であるとのことです。
歯科校医 和久本 雅彦 先生
湯島小学校の児童はむし歯が少なく歯が綺麗な子が多いというお話がありました。
3〜4年生の歯の生え替わりが多い時期では、歯ブラシがしにくいため、特に注意して歯をみがく必要があるとのことでした。また12歳くらいまでは親がしっかりケアしてあげる必要があるそうです。
薬剤師 岡田 麻美子 先生
岡田先生からは、学校環境衛生についてのお話がありました。
プールの水質検査など行ってくださったところ、異常は無いので安心して学校生活を送ってくださいということでした。
第二部
講演「学校保健と感染症」内科校医 大塚 宜一 先生
第2部では、大塚宜一先生から、「学校保健と感染症」についてお話がありました。
コロナウイルスが変異していること、5類感染症となったものの、インフルエンザと比較しても新型コロナの致死率は高く注意が必要です。現在オミクロン株XBB系統が拡大しているが、XBB系統への免疫がまだついていない方が多いので注意が必要です。
最新のワクチンの追加摂取をすると、一定程度の予防効果、重症化を抑える効果が認められるということでした。
生活上の気を付けるポイントとして、カラオケなどの密閉した空間ではエアロゾルでの感染の危険が高まるので注意が必要ということでした。
小児のコロナウイルス感染例では半数以上が無症状でありますが、基礎疾患の無いケースでも重症例がみられたため油断は禁物。
重症例では多くがワクチン2回接種を受けていなかったそうなので、ワクチン接種で重症化を防げる可能性があるということでした。けいれん、せん妄といった症状が出ることもあるケースが多いということはご理解ください、とのことです。
その他にも流行している疾患として、典型的には以下のパターンがあるそうです。
- ヘルパンギーナ:喉が痛くなり高熱がでる
- 手足口病:最初に喉に痛み、手足口に発疹が出て、最後に下痢となる
- 溶連菌感染症:発熱と喉の痛みが出る、放っておくと腎臓に障害が出るので治療が必要
- RSウイルス感染症:高熱、咳、鼻水、小さい子は呼吸困難になることもある
ということでした。
ワクチンの紹介として、任意にはなりますが5-6歳で三種混合ワクチン、小学校6年生からHPVワクチンを打つことが推奨されるそうです。HPVワクチンは、1回目の接種が15歳以降ですと3回接種が必要ですが、15歳になるまでに1回目を打つと2回接種で済むそうです。
生活の注意点として、出来る限りはマスクをつけること、体調が悪いときは無理せずにお休みすることも検討しましょう、というお話がありました。
大塚 宜一 先生 略歴
- 順天堂大学附属順天堂医院小児科客員教授
- 古くから湯島で診療を続けている大塚診療所の総合医院長として診察にあたる(専門は小児科、アレルギー科、消化器)
- お父さまも湯島小で校医を務められた
- 大塚診療所では、英語での診察も可能
- 保育園、幼稚園、小学校の園医校医として活動
養護教諭の先生から
「子供の体力は個人個人で異なることもあります。登校停止期間を過ぎても体調が思わしく無い場合は無理に登校しなくても大丈夫です。
暑いこともあり、マスクをつけることが出来ない場合も少なからずあります。一人一人、無理することなく健康管理を行っていきましょう。」というお話をしていただきました。
養護教諭の木村先生、校医の先生方
とても勉強になるお話をありがとうございました。
文:広報委員S